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歴史 『ハンニバル戦記(下)』

 歴史 NO.7  『ハンニバル戦記(下)』  塩野 七生 著

 第二次ポエニ戦役の終盤から始まる本巻では、カルタゴ本土への攻撃の指揮を執るスキピオとその結果帰還を命ぜられカルタゴに戻るハンニバルとの死闘、そして戦役後のローマの覇権体制、その延長にあるマケドニアとカルタゴの滅亡まで書かれている。

 前巻に引き続きスキピオの戦術眼は優れていたと同時に、外交力も素晴しいものを持っていた。その力は戦役中はもちろんその後も発揮され、地中海諸国を次々と同盟国としていったのだ。さらに持ち前のローマ人の開放性と属国としてではなく同盟国として扱う「穏健な帝国主義」も功を奏し、半世紀あまりでローマは地中海を制覇するほど巨大化していた。

 しかし地中海制覇も束の間、マケドニアやカルタゴが反旗を翻し始めたのだ。彼らはローマ軍によって滅亡され、地中海は平穏を取り戻すものの、ここにきて「穏健な帝国主義」に陰りが見え始めてきたのは紛れもない事実であった。

 ハンニバル戦記を終盤まで読んだ時点で、私は「穏健な帝国主義」こそがローマをここまで大きくしたのだと考えていた。しかしながらマケドニア、カルタゴと立て続けに反旗を翻され強硬な姿勢をとり始めたローマを見ていると、今後の発展はこのローマ人の精神によるものではないのだろうと予想できる。次にローマ人を支配する考え方は何なのか、そして従来の考え方の立場はどうなっていくのかに注目したい。
by jokerish2 | 2005-05-12 10:28 | 本:歴史・ノンフィクション
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