エッセイ 『福翁自伝』

 エッセイ NO.1  『福翁自伝』  福澤諭吉 著

 「自分」をこれほどまでに明確に持っている人がいるなんて信じられない。これが福翁自伝を読んで正直に思った感想だった。幼少時代の家の風や漢学、蘭学、英学の修業中に学んだ書物ばかりでなく、実際に肌で感じた経験などから導き出される揺ぎ無い考え。周囲の声や古い時代の名残に左右されない確固たる自信を持って行動している様。特に幕末から維新という激動の時代においては常識が非常識へと変わりまたその逆もありと、ともすれば本質を見失いがちになるその時代でさえ、福澤諭吉は確固たる自分の考えを見出し貫き通してきた。

 しかしながら政治の話となると、福澤諭吉は西洋文明を取り入れ、独立心を養うことが必要であるという自身の考えを説きながらも生涯政治の表舞台に立つことはなかった。政治に直接関わるのではなく、著書翻訳や慶應義塾を創設することで国民を啓蒙し、間接的に国の発展に貢献する道を選んだ数少ない一人だった。その点において福澤諭吉の国への貢献度は計り知れないものと言えるだろう。

 また文中には、多くの経験から導き出された言葉が記されており、その一文一文は物事の本質を改めて考えるきっかけを与えてくれる。中でも最も印象に残っている言葉が「自分の身の行く末のみ考えて、あくせく勉強するということでは、決して真の勉強はできないだろうと思う」という一文だ。この一文のように、その文だけを取り出して考えると非常に根本的な事柄を問うている文が本文中には多々あり、これからの私自身が物事に対してどのように向き合っていけば良いかについて考えさせてくれる。

 最後になるが、今回福翁自伝を読むことで人間らしい福澤諭吉に出会えたことと、福澤諭吉の意思を継いだ大学で学んでいることの責任感をひしひしと感じられたことが良かった。
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by jokerish2 | 2005-05-12 10:50 | エッセイ(課題)
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