エッセイ 『ユートピア社会主義者たちの夢』

 エッセイ NO.10  『ユートピア社会主義者たちの夢』
 R.L.ハイルブローナー 著

 なぜユートピア社会主義者たちは登場したのか。なぜ彼らは現実とは乖離した空想の夢物語を描く必要があったのか。その現場にいなかった私には理解できないほど過酷で残酷な状況がそこにはあったのだろう。19世紀前半のイギリス、そこでの労働者階級の待遇は悲惨なものであった。1日16時間労働や桶の中の残飯を豚と奪い合わせるなど、資本家階級は彼らを同じ人間として扱っていなかった。さらに、アダム・スミス、リカード、マルサスによって形成された経済法則はいつの間にか不可侵なものとなり、経済法則の下で生じる残酷な世界は必然的に成す術のないものとなってしまっていた。この状態を打開しようと極端な思想を展開したのがロバート・オウエン、サン・シモン、シャルル・フーリエをはじめとするユートピア社会主義者たちである。

 彼らの思想やそれに基づく行動は私に強烈な印象を与えるものであった。オウエンは、貧困問題を解決するためには貧しい人々を生産活動に従事させることが必要であると説き、それを実現する「共同村」の建設へと私財を注ぎ込んだ。また、シモンやフーリエの思想もサン・シモン教会やファランクスを産み出すに至った。今、私を取り巻く環境が彼らの生きた時代と同じものであったとしたら、私は夢物語を描けるだろうか。恐らく描くことはできないし、できたとしても行動に移すことはできないだろう。そう考えると、彼らは自らの思想に対して絶大な信頼を置いていたことがよくわかる。彼らにとって、彼らの思想は夢物語ではなく現状を打破する唯一無二の考えであったのだ。

 私は彼らの信念を追い続ける姿に敬意を表したい。彼らが決めたことを成し遂げる過程では、一時停止はあっても後退はないのだ。この姿勢は私にとって最も欠落しているものの一つであり、見習わなくてはならない。今の私の環境にはそれを修得できる可能性が大いにある。努力すればなんとかなるはずである。何せ「人間は環境の生き物である」のだから。
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by jokerish2 | 2005-06-04 15:18 | エッセイ(課題)
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