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エッセイ 『シュンペーターのヴィジョン』 

エッセイ NO.13 『シュンペーターのヴィジョン』 
R.L.ハイルブローナー 著

 ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター、彼は「世俗の思想家たち」の締め括りに相応しい人物であると心からそう思う。スミス、マルクス、ヴェブレン、ケインズと彼を凌ぐ名声を手に入れた名立たる思想家たちを差し置いて彼が最後に相応しいと思うのはなぜか。それは著者ハイルブローナー氏のこの一文に集約されていると私は考える。

「ヴィジョンという語そのものはシュンペーターのものである」

 振り返ってみると、今までに登場した世俗の思想家たちは自らのヴィジョンを意識していただろうか。恐らく彼らは無意識の内にヴィジョンを持ち合わせていたかもしれないが、答えは否であり、シュンペーターの様にそれを―過剰なまでに―意識していた人物はいなかった。そのためか、私にとって彼の考えはヴィジョンが先行しがちであり、論理は理解できるものの、果たしてそれが経済理論と言えるのか甚だ疑問であった。このことは著者も文中で述べているように、彼の考えは経済学ではなく歴史社会学と言った方が適切なのかもしれない。論理から導き出されるヴィジョンではなく、自らが思い描くヴィジョンから導き出される論理の方向へと世界が動くと信じていたシュンペーター、今なお私たちを惹き付ける彼はまさに知的巨人であると言えよう。
by jokerish2 | 2005-08-25 21:11 | エッセイ(課題)
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