歴史 『パクス・ロマーナ(中)』

歴史 No.37 『パクス・ロマーナ(中)』 塩野 七生 著

 上巻に引き続き、アウグストゥスの政治は巧妙を極めた。決して「帝政」という言葉を口にすることなく、以後のローマに帝政を既成事実に持っていくそのやり方は実に上手い。市民や元老院の支持を背景に同胞アグリッパ、マエケナスとともにパクス・ロマーナの基礎は形作られてゆく。

 著者も言うように、カエサルに比べるとアウグストゥスの治世には迫力が欠ける。それはローマが平和であるからこそであり、仕方のない部分ではあるがやはり物足りなさを感じざるを得ない。しかしながら、派手な戦がない分、彼の治世には政治が目立つのも事実である。中でも私が気になったのが軍事の再編成をする際の彼の洞察力であり、職業に勤務年限制度がなかった時代に彼はそれを定めた点である。給料と退職金とのバランスを考えた勤務年限は、現代の専門的な職業に従事する人々に示唆する部分が多分に含まれている。
 
 また、カエサル同様、彼も一つのことを一つの目的ではやらない人物であり、マキャベリの「如何なる事業も、それに参加する全員が、内容はそれぞれちがったとしても、いずれも自分にとって利益になると納得しないかぎり成功できないし、その成功を永続させることもできない」という言葉も、カエサルとアウグストゥスの政治を上手く形容しているように思う。
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by jokerish2 | 2006-08-09 22:29 | 本:歴史・ノンフィクション
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