歴史 『パクス・ロマーナ(下)』

歴史 No.38 『パクス・ロマーナ(下)』 塩野 七生 著

 パクス・ロマーナが成立し、アウグストゥスの帝政がほぼ完成した今、残された課題は後継者を誰にするかの選択であった。彼が後継者として選んだ息子たちはいずれも若くして命を落としてしまう。さらに生き残ったティベリウスも引退している始末。カエサルとアウグストゥスが基礎を構築した帝政ローマは果たしてローマに根付くのだろうか。

 結局アウグストゥスは70代後半まで生きた。晩年になってティベリウスが復帰するまではアグリッパとマエケナスの死後はほとんど一人で政治という日々のプレッシャーの中で生き抜いた。小林秀雄によれば「政治とはある職業でもなくある技術でもなく、高度な緊張を要する生活」であるという。この状態を生き抜くのに必要な資質は認識力であり、持続力であり、適度な楽観性であり、バランス感覚。確かに彼の治世はこの四つの資質を必要とした治世であったように思う。少し楽観性が足りなかった感は否めないが、それでもバランスの取れた力を持っていたようだ。まだ17歳だったオクタヴィアヌスを見てこの資質を見抜いたカエサルはただならぬ人物であるといわざるを得ない。この力こそがアウグストゥスがカエサルに劣る最大の欠点であろう。
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by jokerish2 | 2006-08-09 22:30 | 本:歴史・ノンフィクション
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