歴史 『危機と克服(中)』

歴史 No.44 『危機と克服(中)』 塩野 七生 著

 ガルバ、オトー、ヴィテリウスの三皇帝が倒れた後、次なるローマ皇帝に抜擢されたのはヴェスパシアヌスであった。三皇帝による内乱と同時期に起こっていた西方のゲルマン系ガリア人の反乱と東方のユダヤ人の反乱を解決することが彼に課せられた最初の問題であったが、息子のティトゥスや協力者ムキアヌスに助けられ解決してゆく。時代が必要としていた健全な常識を持ち合わせた皇帝ヴェスパシアヌスは混乱のローマ帝国を救う救世主となった。

 さて、ヴェスパシアヌスの治世を概観して思うのだが、相変わらず善政を行う皇帝の下には優秀な協力者がいるということだ。これは皇帝の人選眼の善さに尽きると思う。よき右腕を見つける才能も成功への1つの要素と言えるのだろう。確かに日常生活に当てはめてみても、うまくいっている組織のトップの下には優秀なブレーンがいる。つまるところ、人選眼という能力は皇帝であるために欠かせない能力の中でも上位にくるものなのだろう。

 印象に残った一節。

 「民主制を守るために全員平等を貫くしかなかったギリシアの都市国家アテネが、意外にも、他のポリス出身者や奴隷に対して閉鎖社会であったという史実。そして、共和制時代には元老院主導という形での寡頭制、帝政時代に入ると君主制に変わるローマのほうが、格段に開放社会であったという史実は、現代でもなお一考に価すると確信する。」
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by jokerish2 | 2006-08-09 22:38 | 本:歴史・ノンフィクション
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