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歴史 『ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)』

歴史 No.35 『ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)』 塩野 七生 著

 「人間ならば誰にでも、すべてが見えるわけではない。多くの人は、自分が見たいと欲する現実しか見ていない。」ユリウス・カエサルはそんな十四人に殺された。

 彼の暗殺後、彼の遺言書に記された後継者は若き少年オクタヴィアヌスだった。カエサルが指名した人物だけあってオクタヴィアヌスの政治力は優れ、相棒アグリッパとの二人三脚でカエサルの残した壮大な構想は一つ一つ着実に受け継がれてゆく。

 本巻で注目すべきはやはりオクタヴィアヌスの巧妙な政治であろう。特にアントニウスに対する彼の洞察力見物であった。軍事力を背景に力を持っていたアントニウスに対し三頭政治を画策し相対的な力関係を弱めていくのはもちろん、アントニウスの行動一つ一つを反ローマな行為であると世論をうまく誘導し、結果的に彼の独り舞台へと持っていく様は見事であった。追いやられたアントニウスに政治の素質がなかったのも事実ではあるが、アントニウスの行動を所与の条件として状況を改善していくオクタヴィアヌスの能力は卓越していた。カエサルの意思を継いだオクタヴィアヌスは戦いの終わったローマを今後どう導いていくのだろうか気になるところである。
by jokerish2 | 2006-08-09 22:27 | 本:歴史・ノンフィクション
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